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症例1401

何年も長引く体の痛み


●40代女性

【主訴】

首、肩、背中、腰のコリ、つっぱり、痛み 

2年前に痛めた腰部の痛みが治らない

【その他の症状】

他に風邪をひきやすい、体が冷える、喘息、咳が出やすい、湿疹などアレルギー症状が出やすく長引くことがある。

【解説】

 東洋医学では「痺証」という病症があります。「痺証」とは、生命力が足りないために、風邪を引いたが追い出せないまま長期に経過し、ますます生命力が困窮し深い病に入っていく病証です。

 リウマチ、膠原病など現代医学では治りにくい難病とされる疾患、治りにくい関節や筋肉の痛みや炎症、指のしびれなどの症状が起こることが多いです。

 この方は元々胃腸などが弱いタイプではないと思われますが、仕事が忙しく緊張も強く、ストレスも加わって食べ過ぎてしまうことが続いていました。風邪を引きやすく、春先に咳が出る、喘息、湿疹などのアレルギー症状も出ていました。

 体表観察では、上背部や腰部の皮膚が黒っぽくざらつきがあり毛穴が開いている、風邪を引いているのか、肺が弱っているのかと考えられるような経穴の反応があり、胃腸や腎(生命力の根幹)の弱りが見られました。 

 数年前から「痺証」の前段階の風邪が治りきらない状態(風邪の内陥)になり、それが長期化していて、加えて湿痰(消化や排泄が不十分で体に残った余分な物、分かりやすい例ではコレステロールが血管に溜まるなど)が絡みますます生命力の困窮を生み、このままだと「痺証」になっていってしまうのではないかと考えられる症例でした。

【弁証】風邪内陥 腎虚を中心とした全身の気虚 

【論治】去風散寒 益気補腎

【治療方針】

●まず腎と肺を補うことで全身の気虚を救うことを目標とする。腎が補われる事で悪循環となっている肝鬱を納めていきたい。

●風邪が浮いてきたら風邪の治療を優先して行い生命力の回復を図る。

●体表観察によって脾気落ちが明瞭であれば、脾を補い腎を助けるように治療していく。

●生活改善によって脾腎の損傷を食い止める。

【生活提言】

 現在の○○さんのお身体の状態は、10年以上前に引いた風邪が完全に治らず体の奥に入り込んでいる状態です。「風邪は万病の元」と言われ、風邪を追い出せないままでいると生命力の困窮が続き、大きな病気の元となることがあります。

 なぜこれほど長い期間、風邪を追い出せないできたのかというと、追い出せるだけの生命力(土台の力)に余裕が出てこなかったからです。土台の力が弱っているのに、なんとか気を張ってがんばる。がんばればがんばるほど、ますます土台の力を奪ってしまう。そういう悪循環が続き、力を蓄えるどころか、かえって損なってしまうということが続いてきたのだと思われます。背中の痛みや肩こりなどの症状がなかなか良くならず、悪化してきているというのはそういう現状だからなのですね。

 また、身体に無理をしてがんばっているためにそれがストレスにもなりどうしても過食をしてしまう。食事が多過ぎると胃腸はもちろん、生命力全体にとって大きな負担となります。この悪循環もなんとか止めなければいけません。

過食によって、○○さんのお体には消化や排泄が出来なかった余分なもの(「湿痰」とか「内湿」と呼ばれます)が多く溜まっています。「湿痰」は気血の流れを停滞させ、治りにくい病気の原因になるとされます。背中や腰の痛みを治りにくくさせ、だるさや疲労感など症状の一因となっていると思われます。

 また、この「湿痰」と「風邪」が絡むことで複雑な病態を生み、いろいろな症状を起こす事があります。○○さんの咳、気管支炎や喘息、治りにくかった湿疹などの皮膚の症状は、こうした病態で起きていると考えられます。このまま悪循環が続き生命力がより低下してしまうと、さらに治りにくい大きな病気に繋がる事も否めません。

 「風邪」や「湿痰」を追い出すためには、生命力(身体の土台の力)を高める事が必要です。これを機会に、土台の力をしっかりと養う事を心がけていきましょう。まずは鍼灸や漢方で土台の力を補っていき、悪循環を断ちやすくしていきましょう。生命力が上がって風邪が奥から浮いてきたら、しっかりと追い出せるように風邪の治療を優先して行っていきます。

 充分に身体を回復させるためには、鍼灸や漢方だけでは限界があり、日常生活での養生が大切になってきます。以下日常で出来る事をいくつか書きましたので参考になさって下さい。

★食事について

 基本的に腹八分目(もう少し食べたいな、というくらいで止める)、前に食べた物をしっかりと消化してから次の食事を食べる(食事と食事の間を5、6時間は空け、その間は食べない)甘い物や脂っこい物は胃腸の負担となるので減らす、などが理想です。

 特に夜間は消化機能が自然と低下する時間帯です。寝る前にお菓子や甘い物をとる事は胃腸に大変負担となり「湿痰」を溜める原因になってしまいます。まずは夜食を止めることから始めていきましょう。夕食を消化の良いものや軽いもので済ませると、翌朝の疲労感、背中の痛み、便通などに違いが出てくると思います。

★ストレスについて

 日常では頭をよく使い、緊張し気を使う事が多いかと思います。その分気を緩めたり気を降ろしたりする機会を持つと良いでしょう。ストレスを解消し気の流れを良くする為にも、運動する機会を増やす事も大切です。(運動は胃腸や全身の働きを良くし「湿痰」の排泄にも効果があります。)こわばった身体を緩める感じでぶらぶら歩くとか、たまにストレッチをして身体に意識を向けるとよいかもしれません。

 今は疲れが溜まっている時ですから、特別な事(旅行やジム通いなど)をするよりも日常で負担なくできることがお勧めです。


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